August 3, 2022
キングス「第2章」へ 新社長の白木氏「世界に羽ばたくチームに」
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プロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスが、変革の時を迎えた。運営会社である沖縄バスケットボール(沖縄市)の株式を、情報提供サービスを展開するプロトソリューション(宜野湾市、白木享社長)が取得し、経営に参画。それに伴い、球団創設者である木村達郎氏が社長を退き、6月10日付けで白木氏が新社長に就任した。
プロリーグ参入から15年。「沖縄をもっと元気に!」をスローガンに、”西の強豪”として多くの実績を積み重ね、県民に愛されるキングスが球団史の「第2章」へと歩みを進める。7月28日、HUB沖縄と沖縄バスケ情報誌「OUT NUMBER(アウトナンバー)」が白木氏に共同インタビューを行い、資本参画に至った経緯や球団の将来像を聞いた。
スポンサー、個人として交流深める
ーまず、御社とキングスの出会いについて聞かせてください。
「私たちの会社は16年目を迎えますが、10年ほど前に(中古車情報を掲載する)グー沖縄という媒体を展開することになりました。そのプロモーションの一環で、キングスのゴール下に広告を出すことになったのが最初のきっかけです。スポンサーとして初めて試合を観に行った時は圧倒されました。ファンとの一体感がすごくて、こういう世界があるんだって。これはますます伸びるビジネスだと感じました」
「オフィスがお互いに近いこともあって、木村さんと食事に行く機会が何度かあり、アリーナの構想とか夢を語ってもらえる時もありました。木村さんとは同じ年代ですが、こういう経営者はあまりいない。いつか自分もスポーツビジネスをやってみたいと思っていたので、すごく羨ましかったです。ワクワクしながら話をしている様子は、キラキラして見えました。『NBAに行くような選手をキングスで育てたい』という話も真剣にしていました」
昨季メンバーのポスターを挟んで笑顔を見せる沖縄バスケットボールの白木社長(左)と佐々木淳取締役
ー資本参画については、いつ頃から話があったのでしょうか。
「木村さんからバトンタッチができる人を探しているという話を東京で初めて聞いた時には、私も驚きました。キングスに人生を捧げてきた中で、今後についてものすごく考える時期ですよね、という人生観の話をしていました。今後について具体的な事は聞いていませんが、同じ年代なので共感できる部分がすごくありました」
ー白木さんもプロトソリューションを大きくしていく上で、大変なことが多かったのではないでしょうか。
「あまり大変だと感じたことはなくて、これまで楽しくするためにはどうしたらいいかということを常に考えていましたね。人生の半分以上は仕事をする中で、社員がこの会社が嫌で辞めていくというのは嫌だったので、それはできる限りなくしたいという思いはすごく強かったです。もちろん理想論ではありますが、そういう環境をつくりたいというのは今も思っています」
沖縄に根を張った企業として
ーそこから、御社が具体的に経営を引き継ぐことになったきっかけは何だったのでしょうか。
「細かいプロセスは話せませんが、おそらく我々以外の会社も検討はされていたとは思います。その中で、できる限りチームと相性がいい会社がやるべきということと、沖縄という場所に根を張ってビジネスをしている会社であってほしいというニュアンスの話はしていただいていました。ですので、私たちも何回も社内を見てもらったりしながら、その方針に合致しますということはずっと伝えていました」
ー事業を承継するためには、お互いの社風が合っているかというのはとても大事な要素ですよね。
「そこを間違えてしまうと、一番苦しむのは木村さんと一緒にやってきたメンバーです。僕も7月から一緒に働くようになって、彼らにとって確実にプラスにならないとまずいなと強く感じています。キングスのメンバーは少人数によるコンパクトなユニットで、すごく機動力が高くて、常に走っている。そのチームと相性がいい動きができるかどうかというのが、継承先を決める上での一つのポイントだったのかもしれませんね」
「キングスの社員は、とにかく優秀だと毎日のように感じます。これは間違いない。例えば営業に行くと、訪問先から『いつも応援しています』と逆にエールをいただきます。こちらから訪問しているにも関わらず、様々な想いをいただく会社が何社もあります。お客さんが、球団に対して誇りや愛を持ってくれている。キングスの社員が積み上げてきたものをとても感じます」
ーこれだけ地域に根付いた球団を運営していくプレッシャーはありますか。
「むしろワクワクやドキドキの方が大きいです。キングスの社員ともっと色々話したくて仕方ないんですよ。一つのコンテンツを進めていくのにどう考えているのかとか。彼らと相談しながら、刺激をもらって進めていきたいです。本当に楽しみです」
沖縄アリーナを満員に EASLにも注力
OUT NUMBERの湧川太陽編集長(左)からの質問に答える白木社長
ープラスアルファで積み上げていきたいことは何でしょうか。
「沖縄アリーナで初めて試合を観戦した時は、まず鳥肌が立ちました。どこからでも気持ち良く観戦ができ、東京ディズニーランドのように細部まで気を配って設計されている。すごく感動しました。まず私たちの軸になるのは、このアリーナを常に満員にすることです。勝った負けたも重要ですが、お客様が『今日も楽しかったね』『また来よう』と言って帰ってもらえる環境づくりを一層強化していきたいです」
ー具体的な取り組みについては。
「今季は東アジアスーパーリーグ(EASL)があり、来年にはFIBAワールドカップが沖縄アリーナで開催されます。『すごいぜ、日本のバスケは』ということを伝える最大のチャンスです。これができるのは、今、日本の中で琉球ゴールデンキングスしかないと思っています。Bリーグが2026年からの新たな将来構想を掲げている中で、これからの3年間は自分の身を削ってでも頑張らないといけない。せっかくプロトソリューションと一緒にやっていこうということになったので、『チーム沖縄』という意識で組織のレベルを上げていきたいです」
ーアジアからの集客についてはどのように考えていますか。
「アジア客を取り込むきっかけがEASLだと思っています。台湾は高校や大学のバスケがすごく人気で、会場に何万人も入る文化です。公式戦だけでなく、オフシーズンの練習試合も含めて向こうのチームに来てもらうことも一つの方法じゃないかと。マーケティングをしっかりやれば、絶対にアジアからもお客さんが来てくれるという自信があります。スポーツは国境を超えていくので、世界に羽ばたいていきたい。Bリーグの中でも、キングスは世界への扉を開いていくチームであるべきという思いです」
選手がバスケに向き合える環境を
名前を紹介され、コートに駆け出していくキングスの選手たち=沖縄アリーナ
ープロトソリューションはJ2リーグのFC琉球もオフィシャルトップパートナーとして支援しています。沖縄のスポーツビジネスの可能性をどのように捉えていますか。
「スポーツは、選手が涙を流すほど悔しがったり、観ている人が感動したりして、とても真っ直ぐな世界だと思っています。特に沖縄は、キングスやFC琉球、高校野球などスポーツを通じてアイデンティティが育まれる環境があるように感じます。それを企業がサポートして地域振興や子供に夢を与えることはとても大切だし、それによって沖縄の未来が変わる可能性もあると思います。スポーツを通じて『沖縄をもっと元気に』していきたいです」
ープロトソリューションとして、スポーツビジネスに参画したいという思いが以前からあったのですか。
「5年ほど前から、スポーツビジネスをどうつくっていくかということをグループ全体で話す機会がよくありました。その時はチームを持つという話ではありませんでしたが、例えば360度カメラでプレーを分析しましょうとか、間接的でもいいからスポーツビジネスに入っていこうというトライはしていました」
ー他の事業と比較して、スポーツビジネスの特徴はどんな部分で感じますか。
「勝っていればお客さんが入るのであればそれがいいですが、それだけではないという気がしています。隣のファンと一緒に応援するのが楽しい人とか、子供と一緒に興奮するのが楽しい人、この選手を応援したい人とか。競技ごとでも、バスケは展開が速いけど、サッカーは1点の重みがすごくある。観客によって見ている視点が1つではないというところは、難しい部分ですね」
ー選手たちとはどう向き合っていきますか。
「怪我をした選手が早く復活できるような環境やチームが過酷なシーズンを戦い抜くための環境を整え、支えていくことが重要な役割だと思っています。少しずつ話をしながら、彼らが純粋にスポーツに向き合えるようにしたい。ビジネスユニットとして、我々はアリーナを満員に埋め尽くすということは責任を持ってやるので、選手たちには純粋にバスケを楽しんでいる姿を観客に見せてほしい。彼らはあの舞台に立てる本当に一握りの選手たちなので、スポーツを通じて、観ている人に夢を与えてほしいですね」
PROTO Solution(プロトソリューション) 2007年4月設立。沖縄本社のほか、仙台に本社、東京にも支社を構える。中古車情報を掲載する「グー沖縄」、沖縄の不動産情報を扱う「グーホーム」などのウエブ媒体を運営するほか、自転車のシェアサービス「CYCY(サイサイ)」やコワーキングスペース「CODE BASE」なども展開する。
白木享氏(しらき・とおる) 愛知県出身。1970年4月22日生まれ。1998年8月、プロトコーポレーションに入社し、2007年4月にプロトデータセンター(現プロトソリューション)代表取締役社長就任。2022年7月、沖縄バスケットボール代表取締役社長に就任。
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